ロケット開発の目的

極めて安価な衛星軌道投入用ロケットシステムを開発することにより、超小型衛星を打ち上げるコストを大幅に低減し、かつその自由度を大幅に向上させること。
また、ロケットシステムの開発及び超小型衛星の打ち上げを通じ周辺産業の発展に寄与すること。

開発の発端から今日に至る経緯

1997年~2004年

衛星エンジニアである野田篤司を中心として、民間による低価格の衛星打ち上げが可能な最小ロケットの検討がスタートする。結果、数十グラムの衛星を軌道投入する打上げ重量数百kgの超小型ロケットのコンセプトに至る。この構想は、2001年にあさりよしとおの漫画作品「なつのロケット」として公刊される。
更に「日本独自の有人宇宙船構想ふじ」の検討を経て、一人乗りの最小型宇宙船とその軌道投入に必要な最小限のロケットの検討を行う。
その結果、宇宙飛行士一人を含んで総重量400kgの有人カプセルを総重量20tの三段式ロケットで軌道投入が可能との結論を得る。
並行して、民間で有人宇宙開発を行うためのスポンサーを探しはじめる。検討スタッフ、ライブドアの堀江貴文と出会う。
最小型有人宇宙船、超小型ロケットの意義を見抜いた堀江、開発のスポンサーとなり、海外からのロケット調達も検討する。

2005年

主にロシアからのロケットエンジン調達を考え関係各方面に接触するが障害も多く実現せず。
結局、自分たちに開発技術や製造ノウハウがなければ、言い値での購入を余儀なくされ、使用制限等も大きいことが明らかになる。
これらの経緯から自らの手による最小型ロケットの開発をスタートする。

2006年

1月~7月

第一号ロケットエンジンである推力30kgf級、液体酸素とエタノールを使う二液式ロケットエンジンの地上テスト機の設計を開始する。

8月~12月

第一号ロケットエンジンの設計を完了し部品を発注の後、都内にてエンジン試験機材の製作開始する。エンジン本体、供給配管系を完成させ、インジェクタの特性を把握するための水流し試験を開始する。

2007年

6月

燃焼試験に向けて、鴨川に新しい開発拠点を調達する。

7月~12月

本格的な燃焼試験に向け安全確保のため、推進剤供給系を遠隔制御するための改修作業を行い、遠隔制御による水流し試験に成功する。

2008年

2~7月

液体窒素を使っての極低温試験を実施後、インジェクター単体での燃焼試験を繰り返し実施し、液体燃料の燃焼特性についての基礎データを得る。

8月

初のノズルを含むエンジン全体での短秒時燃焼試験を実施し、基礎的な作動データを取得する。
試験規模の拡大により当地の施設も手狭になり、新たなる開発拠点を探し始める。

12月~2009年2月

先の試験結果からインジェクターに改良を加え、更なる水流し試験とインジェクター単体燃焼試験を実施する。

2009年

2~4月

北海道大学永田教授より新しい開発拠点の候補として北海道赤平市の植松電機の紹介をうけ、堀江、野田、牧野、水城、笹本にて赤平市の植松電機を訪問し現地を見学する。この際、植松努専務と会談し、これからのロケット開発拠点として協力を得るに至る。

5~8月

試験場を植松電機に移行し燃焼室を付けての試験を本格的に行う。複数のインジェクターによる各種条件で30回を超える燃焼試験を実施し、多くのデータを得て30kgf級第一号ロケットエンジンによる試験を終了する。

9月~2010年2月

それまでの30kgf級第一号ロケットエンジンを発展させた形で、植松電機の協力を得て推力90kgf級の第二号ロケットエンジンを設計・試作し、数多くの燃焼試験を実施する。テストスタンドの簡素化、アブレーター冷却、グラファイトスロートの導入を行ったエンジンにより、液体酸素,エタノール液体燃料ロケットエンジンの燃焼についての数多くのデータ取得を行う。

2010年

1月

地上燃焼試験の結果を反映した90kgf級エンジンを用いたロケット機体の設計検討を開始する。

2月

これまでのデータを活用し、500kgf級第三号ロケットエンジンの設計を開始する。

現在の開発体制

開発主体

SNS株式会社(東京都港区)

協力企業及びスタッフ

  • 株式会社植松電機(北海道赤平市)
  • 株式会社ペットワークス(東京都渋谷区)
  • 牧野機械設計(北海道札幌市)
  • あさりよしとお(漫画家)
  • 笹本祐一(SF作家)
  • 小林伸光(イラストレーター)
  • 松浦晋也(ジャーナリスト)
  • 野田篤司
  • 水城徹
  • 工藤祐介(筑波大)

※順不同,敬称略

今後の開発計画

  1. 100kgf級実用型液体燃料ロケットエンジンの開発及び同エンジンによる打ち上げ試験。(2010年)
  2. 500kgf級実用型液体燃料ロケットエンジンの開発及び同エンジンによる打ち上げ試験。(2010年~2011年)
  3. エンジンクラスタリング技術の開発及び同エンジンによる打ち上げ試験。(2012年~)
  4. 超小型軌道投入用ロケットULSLV(Ultra Light Space Launch Vehicle)の打ち上げ実証試験。(2013年~)
  5. ULSLV実用化(2014年~)

堀江氏とSNS社の関係

SNS社のファウンダー(創業者)である。

堀江氏の宇宙開発関係の活動実績(年表)

2004.12.26

  • JAXA主催シンポジウム「見上げる宇宙から使う宇宙へ2004」の基調講演「ビジネスマインドと宇宙ベンチャー」

2005

  • アメリカのX-PRIZE財団に理事として参加、$50万を寄付。
  • アメリカの無重力体験飛行会社Zero Gravityに$50万を出資。その後Space Adventuresに合併される。
  • イギリス・マン島(宇宙事業非課税地域)にエクスカリバーアルマズ社を設立。ロシア製宇宙船アルマズとサリュート宇宙船を購入し、民間宇宙旅行ビジネスに参入。
  • JAXA産学官連携プロジェクトにフェローとして参加。民間へのJAXA補助プロジェクトの評価会などに参加。
  • 現・なつのロケット団メンバーと共にロケットエンジンの独自開発の検討を開始

2005.10.17-19

  • IAC福岡にてロシア製宇宙船アルマズをJapan Space Dreamとして展示。同時に商用民間宇宙開発事業への参入を表明

2006

  • なつのロケット団メンバーと共にロケットエンジンの設計・製作を開始
  • 千葉県鴨川市に実験施設を設営。実験を開始する。

2006.1.18

  • JAXA 産学官連携シンポジウム・パネルディスカッションモデレータ(都合により参加できず)

2009

  • 製作中のエンジンの大型化に伴い北海道赤平市の植松電機敷地内に実験場を移転。